撤去するために作品を設置するということ

たとえば、毛糸を高いところに多くかけると(これなど)、それがはずされた後では、かける前とはまったくちがった空間の把握の仕方をするような気がする。それがなくなったことで、何かがとても変わる、不在の現出とでもいうような体験。実際それを口にすると、いっしょにいた人も、自分も同じようなことを感じると言っていたから、これは私だけの感覚などではない。
そういうもの、何か空や視界をそれほど密度があるわけではないもの、毛糸などほんの指示程度のもので区切ったり、さえぎったり、おおったりし、それを取り去る。するとそれは、それを置いたときと同じくらい、あるいはそれ以上に、取り去った後の風景が重要になる。つまり、作品を設置することよりも、作品を撤去することの方が、その場にとって影響力の大きいもの。撤去するために作品を設置するということ。そういうことをすべてふくめた「作品」の制作。