「けやきに花を」ごあいさつとご報告

akadowaki2007-05-06

本プロジェクトの成功に関し、さまざまな方面からいろいろなご助力をいただきましたことに感謝申し上げます。
100万都市・仙台の中心部で、こうした大規模なアート・プロジェクトが実現できたことについて、各方面から「仙台にはそうした文化芸術を受け入れる素地があるのですね」といった感嘆の声を聞きました。こうした評価は、本プロジェクトの成功のみならず、「アート」のもつ力への評価および仙台という街のブランド・イメージを上げる役割の一助を果たしえたのではないかと思います。
都市における参加型アート作品として、本作品の制作においては、市民参加による共同制作方式を採用しました。公募で集まった若者たちは、共同制作の過程において、これまで体験したことのない充実感を覚えたとの感想を口々に述べました。それは「これをつくったからといって、何か得するわけでもないのに、それでも一生懸命取り付かれたように制作に参加してしまいました。こうした感覚は、これまで味わったことのないもので、おそらくアート以外ではなかなか体験できないものではないでしょうか」といったもので、これはアートが単純な経済原理による勝者/敗者といった論理に立つことなく、人と人とを結びつけ、その関係性を再認識・再評価していく役割、あるいはアートが社会における福祉的な役割を担う可能性が十分にあることを示唆するものではないかと思います。このプロジェクトを通じて、「アートによる公共事業」のようなものを考えてみたいと考えています。
制作が完了した週末には、さくら色の毛糸の下で「お花見イベント」を開催しましたが、これは仙台に住む若者たちの表現の場となりました。特に地元高校生バンドによる「お花見ライブ」は、演奏の機会もなく練習をつづける高校生たちに、やってみないかと声がけしたことからはじまったもので、自分の住む街を舞台に、自己表現ができる喜びを味わうことができたとの感想を述べています。こうした若者の自己表現を育てる環境が、街には必要であり、そうした機会を今回提供できたことで、これに続く新たな企画が生まれてくることを期待しています。
本企画は、一般にそれほど露出する傾向のない「アート」としてはめずらしく、マスコミ各社に取り上げられ、期間中はテレビ局、新聞社が取材を行い、中には1度だけでなく、2度にわたって報道してくださったところもありました。こうした影響力をもちえたのは、単に「アート」という殻に閉じこもることなく、仙台という街の顔ともいうべき場所での前代未聞の規模による実施、それにかかわる人々がアート関係者に関わらず、仙台に住む市民によるものだったこと、しかもそのもとで自己表現をする若者たちとの共同企画が週末イベントで開催されたことなど、複合的かつ開かれた、新しいかたちの「アート」であったことがあげられると思います。
本プロジェクトを企画した門脇篤まちとアート研究所は、これからも「まちとアート」をテーマに、「まち」という、人と人とが否応なく関わることで成立している場にこだわった、より開かれたアートを考えていきたいと考えています。逆にそれは「まち」を見直し、活性化させる力へとつながるものだと考えています。
今後とも門脇篤まちとアート研究所をどうぞよろしくお願いいたします。

門脇篤まちとアート研究所
門脇 篤