見るもの/見えるもの

akadowaki2005-10-23

私の毛糸のインスタレーションを写真でしか見ていないと、実物を見たときにはその太さに少なからず驚きをおぼえると思う。別に極太の毛糸を使っているわけではないのだけれど、人の目はそういう風に認識するのだろう。逆に毛糸を見ていて、後日その写真を見ても、それがあまりに貧弱なことにがっかりすることがある。
月は地平線上にあるとたいへん大きく見えるが、天空に上がるととても小さく見える。月までの距離にそれほど変わりがあるわけはないので、月自身の見え方には何も変わりはないのだけれど、地平線という月との対照物があるために、われわれの目が地平線上では大きいものとして月を見るのだという。
フォト・ペインティングといって、写真をもとに描く人の話を聞いたとき、私はその意味が本当のところよくわからなかった。しかし自分が毛糸のインスタレーションを行い、それがカメラや写真を通すと別の見え方をすることを知って、その意味がとてもよくわかったように思う。そしてこれは何もカメラや写真を通したときだけにかぎらないだろう。