Aでないことを、Aでもって証明するようなこと。
「文化は高等遊民の手慰みでもないし、いまや経済力と並ぶパワーを持っている」とか言っても、結局それは高等遊民的に消費されてはじめて認められたり、経済力となってはじめてパワーとされたり、結局、なんにも言ってないのとおんなじなんじゃないか。
「美術はすごいんだよ。例えば、絵の材料になっているキャンバスがどうやってできているかを学べば、社会の勉強にもなるし、その値段を計算すれば数学にもなるし」とかいう話をひとづてに聞いたことがあるけれど、どうして社会や数学を通してしか美術を評価できないのだろう。結局それって、社会や数学に活かせなければダメってこと?
そういう仕方でない方法で価値を見出すことはできないのか。私が思う「アート」や「文化」は、何よりそういうものだ。つまり、それ自体で価値を生み出せるもの。アートがつくっているのは、つまるところ、価値そのものではないのか。