武満徹「ノヴェンバー・ステップス」

をはじめて聴く。なんというか、尺八と琵琶が、ジャズのアドリブみたいでおもしろいと思った。そして何度か聴いているうちに、オーケストラの楽器が音というか音階というか、言うなれば刻まれたそれをきちんと出すためのものであるのに対して、尺八や琵琶においては、いわゆる「音楽」でいうところの音はつけ足しみたいなもので、実際に聞かせたいのはブレスやノイズみたいなものの方なのではないのかと思えてきた。アコースティックギターの演奏などで、ときおり聞こえるフレットノイズは、曲そのものより美しく感じられることがある。しかしノイズだけでは当然おもしろくないので、なんらかの退屈させないしかけが必要になる。それが楽曲なのではないか。尺八のかなでるメロディーでなく、激しくもれる息の音に、琵琶のかなでる和音でなく、弦をはじいたり、スライドさせたりする音に、ぞくぞくするほどの魅力を感じる。